介護職の転職後に命じられた異動は、条件によっては断れます。ただし、雇用契約で勤務地や職種の範囲が広く定められている場合、会社に異動命令の権限があり、正当な理由のない拒否は注意が必要です。
転職前なら、応募先に「異動の範囲」「勤務地」「異動を断れるか」を確認し、合意した内容を労働条件通知書や雇用契約書で確かめることが重要です。
介護職の異動を断れるかは、雇用契約の内容で決まる
異動を断れるか判断するときは、主に次の条件を確認します。
- 異動先が同じ施設内か、別の事業所か
- 勤務地の範囲が契約書にどう書かれているか
- 職種や業務内容が大きく変わるか
- 家庭の事情など、異動によって大きな不利益が生じるか
- 異動命令に業務上の必要性があるか
たとえば、契約書に「勤務地は〇〇施設」と明記されている場合、会社が別の地域に一方的に異動させられるかは慎重に判断する必要があります。一方、「会社が指定する事業所」「法人内の事業所」などと定められている場合は、一定範囲の異動が予定されている可能性があります。
転職前に異動を断りたい場合
転職前であれば、内定を承諾する前に異動の条件を確認し、希望に合わなければ辞退したり、条件を交渉したりできます。
介護職では、同じ法人が複数の施設や事業所を運営していることがあります。求人票に「法人内異動あり」「転勤あり」「勤務地は法人内の事業所」などの記載があれば、異動の可能性を前提に確認しましょう。
採用担当者に確認する項目
- 異動の対象になる事業所と地域
- 異動の頻度や、過去にどの程度行われているか
- 異動後も介護職を続けるのか、別の業務になる可能性があるか
- 本人の希望を聞くのか、会社が決めるのか
- 異動を希望しない場合に、採用条件へ反映できるか
「異動は絶対に困る」という場合は、口頭の約束だけで済ませず、勤務地や異動の範囲を雇用契約書などに記載してもらえるか確認してください。
転職後に異動を断れるケース
次のような場合は、異動をそのまま受け入れず、会社に確認や交渉をする余地があります。
契約書の勤務地と異なる場所への異動
雇用契約で勤務地が特定の施設や地域に限定されている場合、契約内容を超える異動には、本人の同意が必要になることがあります。
ただし、契約書の記載だけでなく、就業規則や採用時の説明も確認が必要です。「勤務地」として本部所在地だけが書かれ、実際の勤務先は別に定める形式もあるため、書類全体を確認しましょう。
職種や業務が大きく変わる異動
介護職として採用されたのに、本人の資格や経験と関係の薄い業務へ大きく変更される場合は、異動の範囲を確認する必要があります。
もっとも、同じ法人内で訪問介護、通所介護、入所施設などへ配置転換されることが、契約や就業規則で予定されている場合もあります。職種名だけで判断せず、実際の業務内容を確認してください。
異動による不利益が非常に大きい場合
通勤時間が大幅に延びる、家族の介護や育児ができなくなる、健康上の理由で通勤が困難になるなど、生活への影響が大きい場合は、事情を伝えて再検討を求められます。
ただし、家庭の事情があるだけで、必ず異動を拒否できるとは限りません。会社へ事情を説明し、異動時期の延期、勤務地の変更、勤務時間の調整など、代替案も含めて相談することが現実的です。
異動命令を断るときに注意したいこと
会社に異動命令の権限があり、業務上の必要性も認められる場合、単に「行きたくない」という理由だけで拒否すると、就業規則に基づく注意や処分の対象になる可能性があります。
一方で、異動命令が業務上必要とはいえない場合や、嫌がらせなど不当な目的による場合、従業員に通常の範囲を超える大きな不利益を負わせる場合は、命令の有効性が問題になることがあります。異動を拒否しただけで必ず解雇される、という意味ではありませんが、自己判断で無断欠勤するのは避けてください。
まず確認する書類
- 労働条件通知書
- 雇用契約書
- 就業規則
- 採用時の求人票や募集要項
- 異動を指示した書面やメール
「転勤」「配置転換」「法人内異動」「会社が指定する場所」などの表現があるかを確認します。口頭で説明された条件と書面の内容が異なる場合は、その違いも記録しておきましょう。
異動を断る前に行う手順
- 異動の内容を確認する。異動先、開始日、業務内容、勤務時間、通勤方法、期間を会社に確認します。
- 契約書と就業規則を確認する。勤務地や配置転換について、会社にどの程度の権限があるかを見ます。
- 断りたい理由を具体的に伝える。通勤時間、育児・介護、健康上の事情など、異動で生じる問題を説明します。
- 代替案を相談する。異動先の変更、開始日の延期、勤務日数や時間の調整などを提案します。
- 結論が出るまで無断で欠勤しない。勤務を続けることが難しい場合は、出勤の扱いを会社へ確認します。
相談内容は、メールなど記録が残る方法でも伝えておくと、後から確認しやすくなります。ただし、会社の指示を一方的に拒否する文面ではなく、「契約上の勤務地と異なるため確認したい」「家庭の事情から代替案を相談したい」といった形にすると、話し合いにつなげやすくなります。
異動を避けたい人が転職先を選ぶポイント
異動を避けたい場合は、求人票の「転勤なし」だけでなく、雇用契約書に勤務地の限定が記載されるかを確認することが大切です。
| 確認する項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 勤務地 | 施設名や地域が限定されているか |
| 異動・転勤 | 法人内の別施設や別地域への異動があるか |
| 職種 | 介護職以外の業務へ変更される可能性があるか |
| 雇用契約書 | 面接時の説明と書面の内容が一致しているか |
「異動なし」と説明された場合も、どの範囲で異動がないのかを確認しましょう。施設内の部署変更はあるが、別施設への異動はないという意味かもしれません。
話し合いで解決しない場合
異動の根拠や手続きに疑問がある場合は、会社の人事担当者や上司に、契約書と就業規則を示して説明を求めます。それでも解決しない場合は、地域の労働局にある総合労働相談コーナーなど、公的な相談窓口の利用を検討できます。
解雇や懲戒処分、退職の強要が関係する場合は、事実関係を整理したうえで、労働問題を扱う専門家へ相談する方法もあります。相談時には、雇用契約書、就業規則、異動通知、会社とのメールや面談記録を用意すると状況を説明しやすくなります。
介護職の転職で異動を断れるかは、勤務地・職種の契約内容と、異動による不利益の大きさで変わります。転職前は異動の範囲を確認して書面に残し、転職後に断りたい場合は、無断で拒否せず、契約書と就業規則を確認して具体的な事情と代替案を会社へ伝えましょう。







